質問をしながらお願いする
何かお願いをするときは、大抵、「あれしておいて」と指示の口調でお願していることが多いと思います。
しかし、指示の口調では、相手は命令されたような気になり、あまり良い気持ちでお願いを聞くことができません。
また、より丁寧に「あの仕事をお願いします」と指示をしたところで、同じです。また、この指示された内容について、相手は、聞き流すという選択もできるようなります。
そんな時、どのようにお願いすると相手の気持ちを尊重し、かつ相手も快く引き受けてくれるのでしょうか。
それは、質問口調でお願いすることが良い方法です。
例えば、「あの仕事してもらえませんか」と聞くようにお願いされますと、先ほどよりも、相手の気持ちを考慮したお願いに聞こえ、相手も引き受けやすくなります。
また、人は質問をされると脳が質問のまま終わらせたくないと勝手に判断し、回答したくなります。
その結果、質問口調お願いされるとつい、流れで「はい、分かりました」と答えたくなります。
これは、別のところでも言えます。
例えば、募金活動をしている人に「募金お願いします」と呼びかけられても、大抵の人はそのまま無視して通り過ぎてしまいますが、「募金をしていただけましたか」と目を見て言われた時、あなたは、そのまま無視して通り過ぎることに躊躇してしまいませんか。
そして、立ち止まってしまったら、今後は「募金していません」とは言いづらく、ついつい募金してしまうでしょう。
このように、相手にお願いするときは、質問口調にするとよいでしょう。
より具体的な質問で誘導する
質問口調でお願いすると、相手も引き受けてもらいやすいことが分かったと思います。
今度は、もう少し踏み込んでお願いする方法です。
夕方、ゲームに夢中になっている子供に、親が「宿題したの」なんて聞いている風景は良く浮かびます。
そこで、子供は「うん。後でする。」なんて回答がされるのは容易に想像できます。
これは、よくある出来事です。
これは、宿題がしたのか、していないかの2択を答える単純な質問なため、相手もなんとなくどちらかを選んで回答すればよいので、軽い気持ちで答えてしまうのです。
そこで、もう少し踏み込んだ質問をすることで、子供は考えて、回答するしかなくなります。
それは、「宿題は何時から始めるの」と聞くのです。
そうすると、子供は何時から始めなければならないのか考える必要があり、適当な回答ができなくなります。
その結果、「夕ご飯を食べたらする」などと、明確な回答をすることになり、しっかりとした約束ができるようになります。
この話には、もう一つ裏があり、宿題をする・しないの選択しがなく、宿題をすることが前提で始める時間を聞いているため、宿題をすることがすでに決定した段階で、お願いをしているのです。
そのため、子供は宿題をしないという回答ができないため、必ず、宿題をする選択肢を選ぶことになります。
仕事の場合では、「この仕事この期日までに終わらせることはできますか」と聞けば、相手は「その期日までにできます」または、「この期日では厳しいので後余分に10日間下さい」などと回答してくれます。
そこで、では「10日間遅れてもかまわないので、お願いできますか」と聞けば、相手も自分の意見を聞いてくれたと感じ、快く引き受けてくれるでしょう。
このように、より具体的にできれば、数字を答えるような質問の仕方でお願いすると相手は、より引き受けやすくなります。
ローボールテクニックを使え
通常のお願いであれば、より具体的な質問内容でお願いすれば、大抵は引き受けてくれますが、そのお願いが、大変な内容で断りやすいときは、どおすれば良いでしょうか。
そんな時は、まず最初に簡単なお願いをして、その後に追加でより厳しい条件のお願いすると相手は、そのお願いを迷いながらも引き受けてしまう可能性が高くなります。
これが、ローボールテクニックと呼ばれる手法で、心理的な「一貫性」を利用した手法です。
例えば、「朝、資料をコピーする仕事を手伝ってもらえませんか」とお願いすれば、大抵の人は「いいですよ」と引き受けてくれるでしょう。
これまでの文章を読んでいる人は、「あれ、具体的な質問をしていない」と思われるかもしれませんが、じつはそこにテクニックが隠れています。
コピーのお願いを「いいですよ」と引き受けてくれた後に、「実は、このコピーは朝の7時から始めないと間に合わないのです。それでも、手伝ってくれませんか。」とお願いすると、相手は一度引き受けたお願いなので、断りづらくなり、少し考えた後、しぶしぶ引き受けてくれるのです。
これは、実際に実験が行われており、「朝7時から、資料をコピーする仕事を手伝ってもらえませんか」とお願いした時より、「朝、資料をコピーする仕事を手伝ってもらえませんか」とお願いして、引き受けてもらった後に「実は、このコピーは朝の7時から始めないと間に合わないのです。それでも、手伝ってくれませんか。」と聞いた方が、倍以上の確率で、お願いを引き受けてもらえたのです。
ここで、注意が必要ですが、このローボールテクニックを使われた相手は「しまった、やられた」と裏をかかれた気持ちになりやすいので、あまり頻繁に使うと大きな反感を生みます。
やはり、信頼関係を築く方が大事なので、よっぽでない限り、「朝7時から、資料をコピーする仕事を手伝ってもらえませんか」とお願いした方が良いでしょう、
誠実にお願いをすれば、相手も快く引き受けてくれると思います。
まずは、信頼関係を築くことが大事であることは心得ておいてください。